#11 初めての検査結果説明

心理シリーズ

今回のテーマは「児相での最初の発達検査あるいは知能検査の結果をどのように保護者に説明するか」ですが、その前に、保護者はどのようなきっかけで児相で自分の子どもの発達について児相に相談しようと思ったのか考えてみます。

一般に、出生してすぐ医学的に分かる疾患(例えば、ダウン症)がない限り、3才くらいまでは、なんとなく他のお子さんと比較して成長がゆっくりかなあと感じたり、言葉がなかなか出てこないなあとか、あるいは他のお子さんと比べて落ち着きがないなあといった様子があったとしても、市町村での保健センターでは、様子を見ましょうということが多いものです。それは、特に年齢が小さいお子さんの場合は、発達の個人差が大きいからです。

ただ、3才を超えても明らかに言葉が出てこなかったり、保育園や幼稚園で集団生活に馴染めない(それは例えば、大人の指示を聞く姿勢ができていなかったり、他の友達の様子を見ることがなく、1人だけで遊んでいたり)ようなことがあると、保育園や幼稚園の先生から発達の相談を受けてみてはどうか、と勧められることもあるでしょうし、保護者にとってお子さんが1人目でなければ、上のお子さんと比較して、発達がゆっくりだなあと保護者も感じていることが多いでしょう。ただ、なかなか保護者自ら自分の子どもに発達の遅れがあると感じ、すぐに児相に相談にいくことは、ハードルが高いことでしょう。

多くの場合は、先ほど話した保育園や幼稚園の先生だったり、保健センターの保健師さんやお医者さんから勧められて児相につながることが多いものだと思います。

こういう時、保護者は子どもの発達のゆっくりさを感じてはいるものの、そのことが明確になることが怖いということもあるでしょうし、信じたくないという気持ちも働いているでしょう。それでも、児相に来所してくるのは、やはり子どもの状態をはっきりさせたいという保護者の気持ちの現れでしょう。そういう経過があって、発達の相談に来ているということを心理司は認識しておくことが大切だと思います。

ところで、日本で子どもに知的障害があると判断できるのは、お医者さんと児相だけだと言われています。医学的な診断ができるのは、お医者さんだけなのですが、行政的な制度としての療育手帳制度(自治体によっては違う名前にしている自治体もありますが、国は療育手帳と呼んでいますので、ここでは療育手帳と呼びます)という、知的に障害がある方達が行政サービスを受けやすくするための制度ですが、子どもの場合は、お子さんの発達状況を判断するのは児相になるので、結果的に子どもに知的障害があるかどうかを判断するのは児相ということになります。ただ、厳密に言えば、児相はお子さんが行政的制度の療育手帳制度に該当するかどうかを判断しているということになります。

さて、検査の結果、発達検査の場合は、発達指数(DQですね)、知能検査の場合は知能指数(IQですね)が明確になります。今回のテーマは、その結果を保護者にどのように説明するのか?ということになります。

初めての発達検査や知能検査結果をどのように説明していくか。このことを考える時に、まず必要なのは検査結果(これは発達指数や知能指数だけでなく、検査時の様子や結果の傾向等を含みます)の情報は、誰に属すものかという認識です。これは、当然、検査を受けてくれた子どもに属する情報だと考えられるでしょう。それは、例えば私たちが健康診断を受けた時、その結果の情報は誰に属しているかということと同じだと思います。

ですから、検査で分かったことは、情報が属する人になるべく分かりやすく説明する義務が児相にはあると思います。ただ、児相での発達検査や知能検査の場合、検査を受けてくれたお子さんは、まだ年齢が小さいことが多いですから、説明するのは保護者に対してということになります。なので、保護者にどのような説明をするかということになります。

まず、検査結果について、最近は分かりませんが、私が勤めていた頃は、発達指数や知能指数をそのまま伝えることは少なく、検査上では〇才〇月くらいの発達状況ですね、というような説明が多かったように思います。その上で、必要な場合は、療育手帳に該当する結果なので、療育手帳制度の説明をするという流れが多かったように思います。検査結果の数字を明確に言わないのは、発達指数だったり知能指数といった数字が1人歩きすると言われていたからで、1人歩きというのは、例えばIQ60とお伝えすると、60という数字が不変のように保護者が感じ、IQ60ということに縛られてしまい、子どもの成長への働きかけが少なくなってしまうのではないか、という理由だったような気がします。

しかし、それこそ心理の専門家として検査上のIQ60とはどういう意味を持つのかを説明する必要があると思いますし、検査上、お子さんの得意なこと不得意なこと等を説明し、未来予測についても、もちろん完全に予測することはできませんが、多くの場合は、年齢が上がるに従ってIQは下がっていく傾向があること、しかし、目の前のお子さんがそうなるとは限らないこと、そのためにはどんな関わりをしていくことが大切であるか等、の説明をしていくこが大切だと思います。

 では、具体的にどんな説明をするかということですが、私が現役時代、どんな感じで説明していたのかを、次回紹介したいと思います。

 

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