#12 (児童)精神科医について

日常のエピソード

 日常のエピソードの前回は、高機能自閉症の方について書きましたが、今回は、その流れから精神科医師(以下、Drと書きます)について感じてきたことを書きたいと思います。

 私は児童相談所で長く働いてきたこともあり、(児童)精神科Drとの仕事上のお付き合いが結構ありました。自分が若いうちは、一般的にDrは社会的な地位もありますし、また、児童相談所にはアドバイザー的な位置づけで来て貰っていたので、Drの言うことに間違いはないと信じていました。

 しかし、時間が経つうちに、Drも一人の人間なのだから、間違うこともあるし、知らないこともあるんだなあと感じるようになりました。

 Drの仕事は、病気の診断と必要な治療を行うことです。場合によって薬を処方してくれますし、患者の相談にも乗ってくれます。

 しかしながら、児童相談所の場合、患者は子どもで、相談したいのは、その保護者であることがほとんどです。保護者は、日常生活の中で子どもの言動に困っていることが多いために、Drに日常生活でどのように子どもに接することがよいのかを相談することも多いのです。ところが、Drは家族が生きている生活環境とはあまり関係なく、患者である子どもの視点だけでアドバイスすることが多いのです。考えてみればそれは仕方のないことで、Drは基本的には子どもしか見ないので、現にある家庭環境の中でDrのアドバイスが実行可能であるかどうかを見極める視点をあまり持っていないないことも多いのです。

生活というのは、保護者や子どもが様々な条件(親子関係、生活リズム、経済的状況、近隣との関係、きょうだいとの関係、祖父母世代との関係等)の中で生きているということなので、有効なアドバイスとは、Drに限らず現在の生活の中で実行可能なものであることが大切なことだと思います。

こうした思いから、いつ頃からは忘れましたが、Drには診断と投薬だけを期待するようになりました。ただ、診断だけでも「何者か分からない」状態より、よほど対応方法のヒントが貰える訳で、ありがたいことだと感じるようになりました。服薬で効果があればなおさらです。

一方で、子どもの生活まで視野に入れてアドバイスをしてくれる、複数の素晴らしいDrにも出会ったことがあることも付け加えておきます。

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