#13 初回検査結果説明について

心理シリーズ

#11回の続きです。今回は、初回検査結果の説明について、昔、私が行ってきた説明方法を紹介します。

説明の前に#11回の内容を簡単におさらいします。

〇児相に子どもの発達について相談してくるのは、子どもが3才を過ぎた頃からが多いこと

〇児相に相談に来る場合、保護者はそれなりの覚悟を持って児相に来ること

〇検査結果の情報は子どもに属していること

〇結果の説明は保護者に対してすることが多いこと

〇昔は、検査結果の数値を説明しないことが多かったが、その数値の意味をきちんと説明した方がよいのではないかということ

〇一般に知能検査は、年齢が上がると数値は下がることが多いことや正確ではないことを前提にしながらも、将来予測も説明した方がよいのではないかということ

といったことでした。

 それでは、過去に私が行っていた説明について紹介します。

田中ビネーVという知能検査で、実際の年齢の半分(IQが50となります)だった場合についての説明です。

結果説明の前に、前提として、人間には色んな能力がありますが、知能検査というのは、そのうちの一部しか測っていないのですが、長年の研究の結果、知能検査の結果は人間の知能と呼ばれる能力を代表することに適しているとされていることを説明します。この説明の意図は、知能検査の結果だけでは子どもの全体像を説明できないことと、言葉にはしませんが、お子さんには、検査では測れない色んな能力があることを伝えたいという思いからです。

本来なら、比率IQと偏差IQの説明もした方がよいのかも知れませんが、やや専門的になりすぎて、保護者にとって、子どもの状態を理解するという点において、複雑になり過ぎると思われるので、説明はしてこなかったと思います。

上図を見て下さい。この図は、私が昔、保護者に検査結果を説明する時に使用したものです。ただ、最初から全部を見せていた訳ではなく、最初に縦軸と横軸を書きながらグラフを書き始め、検査結果の説明をしながら手書きで書き加えていき、最終的に示したような図になるものです。このグラフの縦軸は検査で測れた力(一般的には精神年齢と呼ばれています。どうして精神年齢と言わないかというと、「精神年齢」という言葉から受ける印象が、その子の全体がその年齢であるという風に聞こえると感じるからです。先ほども触れたように知能検査はその子の一部分しか測っていないので、検査結果で得られた力と表現しています)。横軸が生活年齢(実際の年齢)です。太い点線で表しているのが、IQ100であった場合の14才までの曲線です。今回の結果は、検査で測れた力が1才6ヶ月、実際の年齢を3才と仮定して実線で表現しています。交点が、今回の結果を表している所です。この説明をした時に、保護者にIQ値を伝えていたと思います。その後、検査上での理論値(検査の考え方すると、現在IQ50ならば、今後もIQ50が継続するだろうとの考え方です)を実線で表しています。ただ、実際は、ずっとIQ50という結果が出ることの方がまれで、IQは一定の範囲で変化する方が一般的です。その範囲のうち高い見通しを示しているのが、高い見通しという破線で、低い見通しを示すのが低い見通しの破線です。可能性が高いのは、どちらかというと、低い見通しに近いことの方が多いことも伝えます。しかし、今回のお子さんがどうなっていくかは本当に分からないので、できるだけ高い見通しに近づけるような努力をしましょうと伝えていたと思います。その上で、検査上から見えた、お子さんの中で比較的得意な面、なかなか難しい面を伝え、どうしてもできない側面に目が行きがちだけれど、比較的得意な面を認めあげた方が、より成長しやすいことも伝えていたと思います。この意図は、できない側面に目を向けると、どうしても否定的になりがちだし、子どもの自己評価が低くなる可能性が高くなると思いますし、できていることを認めてあげた方が、子どもの自己評価も高まり、別のことにも取り組んでみようとする意欲が高まると考えていたからです。

 このような説明をすべての保護者にしていた訳ではありませんが、児相で初めて検査を行った場合には、極力、紹介したような方法での説明を心がけていました。もちろん、結果の内容によっては、保護者が強いショックを受けてしまう可能性もあるので、児相を紹介した機関から保護者の情報(例えば、子どもに少し依存しているような傾向があるので、説明は丁寧にして欲しいとか、逆に子どもの発達所状況にほとんど関心を持っていないようなので、子どもの現状をきちんと伝えて欲しいとか)があるのであれば、そのことを念頭に置き、結果説明の際の保護者の様子を観察しながら、どこまで説明するかということを判断していたと思います。

 また、結果については、保護者が希望するのであれば、保育園や幼稚園等への説明も行うことを覚悟しながら説明していたと思います。

 私が今回、昔の説明方法を紹介したのは、紹介したように説明して欲しいと思っている訳ではなく、どのように保護者に説明していくのがよいのか?ということを、仲間内で話し合って欲しいと思うからです。

 検査結果の説明は、しかも初めての場合は、内容的に保護者にとっては、かなりデリケートな内容です。とは言っても、時代によって保護者の意識は変わっていくものですし、昔のやり方がベストだとは思いません。時代に応じた方法を探っていくことは、専門家としても責務だとも思うので、先輩や上司から教えて貰った方法だけでなく、先輩や上司が何を大切にしてきたかを尊重しながらも、その時代に合った方法を模索していって欲しいと思います。

 

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