#23 見立て共有のための土台作り2

心理シリーズ

前回は、見立て共有のための土台作りということで、14回から16回の児童養護施設に入所中で知的に課題があり家に帰ることが難しいと判断される子どもに対する支援について、職員側の連携について考えてみました。今回は、その続きということになります。

前回は、施設職員から相談を受けた福祉司が児相に戻って心理司との情報共有をどのようにしていくかということを考えました。

その続きとして、福祉司と心理司の間で、今回の再検査の目的は、知的な課題の確認と結果を基にした支援方針を検討することという目的が共有できると、心理司は施設職員に連絡して再検査の実施について調整することになります(この調整も福祉司が行う自治体もあるかも知れません)。

心理司は、この時点で施設職員のニーズを直接聞くことになります。ここでは、福祉司から聞いた内容と施設職員のニーズが同じかどうかを確認することになります。もし、内容が異なるようなら(異なる内容によってですが)再検査の内容を変更したり、場合によっては再検査そのものを実施しない場合もあるかも知れません。ここでは、福祉司と施設職員の話に違いはなかったとして再検査を実施することで調整ができたこととします。

再検査の結果、知的障害の範疇に入る結果だったとしましょう。その結果を基に、心理司は今後の支援について福祉司と検討することになります。ここでの判断は、以前も話したように子どもの年齢やその他、その時の周りの環境を考慮して検討することになりますが、私の考え方からすると、知的障害としての支援に向けて子どもにはどんな支援が必要かを検討し、そのためにどの程度の時間をかけていくかをイメージすることになります。例えば、支援級などの体験を行うとして、実際にそういった体験が可能なのかどうか、学校ないし教育委員会に確認する必要があるでしょうし、実際に支援級や支援学校に入級・入学するためにはどのような手続きがいつまでに必要なのかも確認する必要があります。また、体験を通して子ども自身はどうだったかを、誰がどのように確認するかも考えておく必要があります。

福祉司との検討の中で大切なことは、長い目でみての方向(ここでは知的障害としての支援)を共有することはもちろんですが、次にいつ何をするのか具体的に決めることです。

これから書くことは自治体によって随分異なることかも知れませんが、仮に今回の対象の子どもが虐待ケースだった場合、私がいた自治体では、担当する福祉司は虐待対応を主に業務とする福祉司で、障害を主に担当する福祉司は別にいたので、虐待対応を主に担当する福祉司は障害に対する支援についての理解が十分ではないことがありました。

また、施設の職員も、施設入所中の支援級や特別支援学校の利用等については理解していても、成人になるとどのような支援を受けられるのかといった、障害を持つ人についての長いスパンを見通した支援ということについては、知識が少ない場合もあります。

こうした職員(児相でも施設でも)は、知的障害を持つ子どもが、これまで話してきた、自己肯定感が低くなったり将来に自信が持てなくなるということがイメージしにくい場合があり、これから行う具体的支援が、子どもにとってどのような意味を持つのかが理解しにくい時もあります。このように、長い見通しを持ちながらの支援を共有することが職員側で難しい場合、ざっくりとした「知的障害への支援を目指す」という共有だけでは、実際に何をすることが大切なのか職員側がイメージできない場合もあります。

支援級や特別支援学校の利用を目指すことや、そのためには体験を通して子どもに判断できるような支援を行っていくことの大切さを職員側が共有していないと単に子どもを説得するような支援になってしまうことになりかねません。

今回、見立て共有のための「土台作り」というテーマにしているのは、今回の子どもで言えば、「知的障害としての支援を受けた方がよい」というのが「見立て」に当たりますが、知的障害としての支援を受けいれていく判断を子どもができるようになるためには、どのような支援が必要なのかを職員側が具体的に共有している必要があり、その作業が「土台作り」ということだと思うのです。

もし、その子どもに関わっている職員みんなが知的障害としての支援についてよく知っており、子どもにどのような事が必要かも分かっているのであれば、この「土台作り」の作業は必要ないということになります。

しかし、児相職員(特に福祉司)の業務が細分化され、分担制になってきていることや現実として施設職員の在職期間が短くなってきている現状では、子どもの長い人生を見通して必要な支援をイメージしていくこと自体が難しくなってきていると思います。児相の分担制そのものは必然だとは思うのですが。 子どもを担当する職員(福祉司、心理司、施設職員)が、子どもの人生を見通しての支援をイメージすることが大切であるとの認識を持ちつつ、そこに向かうためには具体的にどのような支援が必要かを検討することが、異動(転勤)を前提とした職員がチームとして機能するために大切なことだと思いますし、支援の検討を重ねることが「見立ての共有」と「共有のための土台作り」という作業を行っているということだと思うのです。

 

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