夕食時にはお酒を飲むことにしていて、どうしても早く眠くなってしまうので夜の時間のドラマを集中して見ることができません。また、年を取ると朝早く目が覚めてしまうし、退職すると、朝、急いで支度して仕事に出かける必要もないので、目は覚めるけれども、ゆったりした気持ちで朝の時間を過ごすことができるようになっています。という訳で、NHKの朝の連続ドラマを見ることになります。などと、連続ドラマを見ているいい訳をしていますが、朝の連続ドラマを取り上げるのは3回目になると思います。
今回は、現在、放送中の「寅の翼」から、つい最近のエピソードです。主人公は、伊藤沙莉さんで、ドラマの中での名前は寅子(ともこ)。寅子は、第二次世界大戦前に大学で法律を学び、一緒に学んできた複数の友(女性)が、それぞれの理由で法律の道を諦めざる得なくなる中、寅子は友の期待を背負って弁護士試験に合格します。しかし、女性弁護士は他におらず、時代的に女性弁護士が担当だと分かると、男性に代わって欲しいという依頼人ばかりで仕事になりません。寅子は社会的地位を得るために結婚して仕事を得るのですが、戦況が悪くなる中で子どもができ夫が戦争に行き、家族の生活を維持するために法律の世界を辞めるのです。これは、社会的状況から言って仕方ない選択だと思うのですが、寅子の中では、友の期待を裏切ったのだという自責の念が沸き起こります。しかも夫と兄が戦死、父も亡くなります。しかし、戦争に負けたことで新憲法ができ、男女平等が謳われます。弟が学ぶことが好きだと知っていた寅子は、弟を大学に通わせるためにも自分が働くことで家族を支えようとします。
それで寅子は法律の世界に戻るのですが、家族を支えなければいけないという思いも強く、若い時のように思ったことをそのまま口に出すのではなく、周囲との関係が悪くならないように(職を失わないように)、ドラマの中では「スンッ」と表現されるのですが、角を立てないような言い方をしてしまいます。自分の表現が「スンッ」であることを寅子は自覚しているのですが、家族のために仕事をしているのだからと諦めている寅子もいて、また、いったん友の期待を裏切って法律の世界を辞めた自分には、昔のように思ったことをそのまま表現する資格はないと感じている部分もあるようでした。そこに、大学の恩師が、法律の世界ではない仕事を紹介してくれます。恩師は、寅子を法律の世界に入るきっかけを自分が作ったと感じており、現在の寅子の状況を、法律の世界で無理して働いていて不幸だと感じていたから、別の仕事を探してきてくれたのです。
その話を聞いた寅子が、「はて?」と疑問を抱きます。私は不幸なのか?そして何より自分は無理して法律の世界にいるのか?という疑問です。寅子は、そこで自覚します。自分は不幸ではないし、法律の世界は自分が好きだからいるのだと。そして、「私が私でいるために努力してみるか」と覚悟を決めるのです。
今回のテーマで書いた「自分が自分であること」というのは、少し言い換えると「自分は何を選択していて、それをどれ位自覚して覚悟している」か、ということだと思います。生活していると色んな事があり、様々な理由でやらなければいけないことはたくさんあります。「〇〇しなければいけないこと」が多くなってくると、自分が選択しているのではなく、やらされている感が強くなり、一体自分はどこに向かって何をしようとしているのか分からなくなることがあります。そういう状態になることは仕方がないというか、そういう時ってあるよなあと思います。 しかし、寅子のように人から言われることで、自分に問い直してみて気づくこともあるでしょうし、できるのであれば、心の中で現在の歩みを止めて立ち止まってみて、自分を振り返り、自分の位置(何をしたくてどの方向に向いているのかなど)を再確認できることができればいいのになあと感じた今日でした。
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