#72 事務所と保護所のあいだ

あいだシリーズ2

第4回に「福祉(心理)司と一時保護所職員のあいだ」というテーマで書きましたが、今回は「事務所と一時保護所のあいだ」というテーマで書いてみたいと思います。

「事務所」というのは、福祉司や心理司がいる事務所という意味です。自治体によって違いがあるかも知れませんが、保護所は子どもが生活する場所なので、職員が保護所からいなくなるということは考えにくく、とはいえ、職員は内部あるいは外部との連絡や記録などの事務をする必要はあるので、保護所の中に子どもが生活する場所とは別に職員がいる場所があるのが一般的だと思います。

今回は、福祉司や保護所職員といった個人ではなく「福祉司や心理司の組織と保護所という組織とのあいだ」という意味で「事務所と保護所のあいだ」ということで話してみたいと思います。

さて、第4回のおさらいを簡単にしますと、保護所というのは子どもと職員とで保護所という社会を作っていること、保護所の職員と担当福祉司、担当心理司は異なった役割を持っているので、お互いが役割の違いを意識しながら子どもにかかわっていくことが大切ではないかということを書きました。

ところで、私が働いていた神奈川県の児相では、(私が退職する時にはですが)6か所の児相のうち3か所に保護所が併設されていました。今年の10月に大和綾瀬地域児相が綾瀬市に移転すると聞いているので、もしかしたら、4か所目の保護所ができるのかも知れません。それはともかく、保護所というのは福祉司や心理司がいる事務所とは物理的に離れて設置されていました。神奈川県では「養護課」と言い、課長もいて福祉司や心理司がいる事務所とは別の組織になっています。子どもの生活を見ている訳ですから、職員は24時間体制で交替勤務をしているということになります。保護所が併設されていない児相の場合は、福祉司や心理司は保護している子どもがいると、他の児相の保護所まで会いにいく必要がありました。

さて、今回どうして組織としての「事務所」と「保護所」について書こうかと思ったかというと、私は心理司だったので、少し距離を置いた中で見ていて感じたことなのですが、保護所という組織は、少し被害的になりやすい組織だということです。被害的というと語弊があるかもしれませんが、保護している子どもがこの先どんな風になっていくのか(見通しですね)が見えにくいというか感じにくいシステムになっていたことが1つの原因だと思います。

児相のシステムとして(定例か臨時かはともかく)援助方針会議で担当福祉司や担当心理司を中心として協議し、児相としての方針を決めていくことになる訳ですが、その場に生活している保護所の担当者がいることは稀で、多くの場合、課長や(神奈川県では)SV(他の自治体では係長クラスでしょうか)が出席することが多いのです。それは、先ほど書いたように子どもの生活があるので、保護所の担当者が保護所から離れることが難しいからです。ということは、保護所の担当者は、子どもの今後についての協議に参加することができず、担当する子どもの見通しが間接的に、しかも協議の後に聞かされることになる訳です。日常的に子どもからの発信を聞くのは保護所の担当者であることが多いのに、子どもからの発信にすぐに答えることは難しいという状態になります。

こうした子どもへの支援の見通しが見えにくくなることが、保護所が少し被害的になりやすい1つの原因になっているような気がします。

それと、保護所の課長やSVは定例の会議に参加し、児相全体の状態を把握しているので、保護所のことだけを訴える訳にもいかず、どちらかと言えば保護所の現状(入所している人数や入所数の見通しなど)を訴えることが多くなってしまうことも要因の1つのような気もします。

こうした、事務所と保護所のあいだにはシステム的な課題があることを福祉司や心理司は認識しておくことが必要だと思います。私が知っている福祉司さんは、(保護所が併設されていた児相でしたが)可能な日は毎日保護所に顔を出し、特に用がなくても保護所職員と子どもに会ってから事務所に来るということを続けていました。そうすることで、子どもの変化や職員からの情報を得て次の支援をタイムリーに考えていくということができると話していました。保護所からしても、毎日来てくれることが分かっていれば、福祉司との情報交換もしやすくなるので、子どもとの対応も助かると感じていたと思います。

福祉司全員に、同じことをして欲しいとは思いませんが、保護所は支援の見通しが伝わりにくいということを理解した上で、保護所との日常的な情報交換を意識して欲しいと思います。保護所からすると、見通しが分からないと、つい、福祉司に「どうなっているんだ」とか、「早く、保護所から出して欲しい」といった要望を言うことになりかねず、福祉司からすると、保護所から厳しいことを言われると感じてしまい、より保護所に行き辛くなっては本末転倒と言わなければなりません。 こうした事務所と保護所という組織間のコミュニケーション不足の影響を受けるのは、結局子どもになるので、事務所と保護所には、コミュニケーション不足になりがちな傾向があることを理解し、それを補うような方向で業務を行って欲しいと思います。

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