#74 児相と施設のあいだ2

あいだシリーズ2

第5回に「児相と施設のあいだ」というテーマで書きましたが、今回は「その2」ということで書いてみたいと思います。

まず、第5回のおさらいをすると、子どもが養護施設に入所したあと、児相が子どもに会うのは施設の内外で不適応的な言動が出てきた場合が多く、その場合は、子どもに何が起こっているのか探る必要があること。ただ、児相は子どもの成育歴を知っているために成育歴からの影響が原因ではないかと感じることが多いこと。一方、施設は入所してからの子どもの姿を見ているので、現実に起こっている出来事から子どもの状態を判断しようとする傾向があると書きました。児相は成育歴上からの影響を見ようとするのに対し、施設は入所後の子どもが生活している現在の環境からの変化を見ようとする傾向があると書きました。ただ、双方の見方が間違っている訳ではなく、見ている側面が異なっていることをお互いが認識した上で、対応していくことが大切であると書きました。

第5回は、養護施設を念頭に置き、職員間のことを主に書いたのですが、今回は特に施設の種別に関係なく、児相の立場から施設との付き合い方のようなことについて書きたいと思います。

児相は、様々な施設とのやり取りがあります。障害児施設は、以前、知的障害や肢体不自由、目の見えない盲児、あるいは重症心身障害など障害別の施設に分かれていましたが、平成24年の児童福祉法改正により福祉型と医療型に分けられました。児相がやりとりする施設としては、その他にも乳児院、養護施設、自立支援施設、心理治療施設などがありますし、施設ではありませんが里親委託や自立援助ホームといった子どもの状態や状況によって様々なやり取り先があります。

今日、書きたいのは、入所の時というよりは、既に入所している子どもが、何らかの言動をしていて、施設の職員が困って児相にも相談したいというような場合です。このような場合、まず、担当福祉司に連絡があることが一般的ですが、児相としては、それが施設の誰からの連絡なのかを確認しておくことが必要です。多くの場合は、施設の子ども担当からでしょうが、時に、寮のトップ(寮長さんと呼ばれることが多いかも知れませんね)だったり、現場のトップ(主任指導員といった肩書が多いでしょうか)の方から連絡があることもあります。そうした場合は、子どもが起こしている言動が、施設全体に影響している可能性が高くなります。ただ、施設によっては、児相のような外部との連絡は寮長だったり主任指導員がするルールになっているような施設もあるかも知れず、そういう施設の場合は、特に考慮は必要ないかも知れませんけれども。

施設から、子どもについて相談したいという連絡があった場合、子どもがどんなことを起こしているのか確認することはもちろんのこと、子どもが起こしている事態を施設がどんな風に受け止めているのかを確認することも大切です。子どもが起こしている事態が、(施設の)子ども担当が困っているのか、寮として困っているのか、施設全体として困っているのかを見極めておくことは、その後の対応に大きな影響を与えます。

例えば、子どもが同じ寮内のお子さんとのトラブルで困っていると子ども担当から連絡があったのであれば、子ども担当の話を聞くだけで済むかも知れません。しかし、そのトラブルが寮内全体に影響を与えるようなことであれば、子ども担当だけの話を聞くだけでなく、寮長や他の職員の話を聞くことが必要になってくるかも知れません。さらに、子どもの言動が、外部の機関(例えば学校だったり、警察だったり)にも影響を及ぼすようなことであれば、施設としてどのように対応するかというような内容かもしれず、そうなると場合によっては、主任指導員や施設長までを交えて話す必要があるかも知れません。

子どもが起こしている事態が、どれほどの影響があるのか、もちろん、施設もその判断はするでしょうが、連絡があった児相もその判断をする必要があると思います。そうした判断ができるためには、先ほど言った、子どもが起こしている事態を具体的に確認するだけでなく、施設がどのように受け止めているのかという情報も大切なものとなります。

それと、もし、児相の担当者が施設へ行って話を聞くような場合、その話し合いの場に誰が参加するのかということも、施設のその事態に対する姿勢が見えてくる情報の一つです。施設の子ども担当だけが参加するのであれば、子ども個人のことだったり寮内の限られた範囲のことの可能性が高いでしょうし、寮長も参加するようだと、寮内の広い範囲に影響を及ぼすと施設は判断しているのかも知れません。ただ、寮長はこうした児相との話し合いには必ず出席する施設もあるので、そのあたりは、施設によって異なります。

主任指導員や施設長まで出席するようだと、施設としては子どもの言動の影響を重く感じていると判断した方がよいでしょう。

とはいえ、児相の担当者は、施設と1回だけの話し合いですべてを決める必要はないと思いますし、いったんは児相に持ち帰って上司に相談することが多いでしょう。ただ、子どもの状況によっては時間をおかずに児相としての判断を求められることもあるでしょう。その判断にも先ほど言った施設としての受け止め姿勢の情報が貴重なものなります。

もし、時間的余裕があったり、あるいは緊急の対応として、例えば一時保護したとしても、その後、施設に帰す方向になった時、どのような対応をするのかを児相としても考えなければいけませんし、その内容を施設と共有していく必要があります。

この場合、その施設のこの人にアプローチすれば施設内への影響力が高いというような、なんというか、施設の見立てというようなことが大切になります。これは、普段からの施設を知っていなければ難しいことです。

施設の情報を集めるためには、施設の中の影響力が強い人との信頼関係もありますが、他の児相職員の動きや、それに応じた施設の動きがどうだったかを知っておくことも判断材料の1つになります。

施設は基本的に子ども中心で物事を見ています。普段から入所している子どもの家庭状況などの変化を施設に適宜伝えておくようなことも大切ですし、自分が担当する子どもとのコンスタントな面接も大切なことです。 結局、施設から子どもについての相談を受ける前から、こまめに施設との関係作りを意識して行っておくことがとても大切だということを伝えておきたいと思います。

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