第37回に、児相と発達障害を持つ保護者のあいだというテーマで書きましたが、今回は、児相と発達障害を持つ(であろう)保護者とのあいだ、その2ということで書いてみたいと思います。
第37回では、発達障害を持つであろう女性について書きましたが、今回は男性について書きたいと思います。第37回と同じように私が再任用で働いていた頃、子どもは既に施設に入所していて、保護者との面接を行っていたことがあります。面接の場は、私とは別に以前からの担当者がいて私の役割は、施設に分離している子どもとの交流や今後の進め方について以前からの担当者と一緒に考えていくという役割でした。
子どもは施設に入所していたのですが、月に1回程度、面会交流をしていました。両親共に働いていたのですが、車の運転をするのは母親だけで、母親は仕事で忙しかったため、交流の都合を合わせることに苦労しました。しかも、自分達の都合に合わせて欲しいという要求が強くあったため、なかなか交流の内容についてテーマにすることができにくい状況にありました。面接開始時に父親は、必ず座った前の机にスマホを(おそらく録音していたと思われますが)、面接中は、母親の細かな具体的な要求に対して賛意を示す姿勢を示していました。
事前の情報で、父親は転職を繰り返していて(私との面接開始時には就労していました)、母親とは同じ職場で知り合ったようですが、既に違う会社で就労していました。父親の意見は当初論理的なように聞こえていましたが、同じような論理展開が多く、だんだん論理的というよりは、こだわりのように聞こえ始めました。母親の話からは、父親は家で家事等はしないで、好きなことをしているとのこと。そんな状況が分かってくると、どうして母親はこの父親と結婚したままなのだろうと感じ始めました。
その時は、母親にとっては、一人で児相の相手をするほど自信がなく、父親がいることで、児相との対応がスムーズにいくと感じていたのではないかと思っていました。
面接が継続するうち、父親は勤めていた会社を辞めてしまいました。その点について父親は多くを語りませんでしたが、どうも、上司とのトラブルがあったようでした。こうなってくると、母親にとって父親は経済的にも生活を支えてくれなくなり、母親にとっては手間がかかる同居人のような存在になっていたようです。それでも別れなかったのは、子どもとの交流を継続するためには、父親の力が必要だと感じていたからでしょう。
先ほど話したように、父親の主張は、論理的というよりこだわりに近いものであり、就労の失敗(詳しいことは分かりませんが)を考えても、(しかも、自分が仕事を辞めるということは、母親の経済的負担が大きくなることも十分理解していても辞めてしまうことを優先するのは)おそらく、広範性発達障害(知的な課題は感じませんでしたので、アスペルガー的な傾向)を持っていると考えた方が、父親の言動を理解しやすいと考えるようになりました。
ちょうどその頃に、元々の担当者が異動となり、新しい担当者は児相経験がない人だったので、SV(福祉司の係長クラス)が一緒に面接するようになりました。その後、SVは、母親と父親を別々にして個別面接を始めたのです。すると、母親との面接では離婚についても話されたようですし、父親との面接では、父親自身のことを話すようになったようなのです。このことは、私にとっては少なからずショックでした。もし、もっと早く父親の特徴について気が付いていれば、面接構造を変えることも検討できたかも知れません。
夫婦そろっての面接では、父親から言えば、母親の手前、自分が役にたつことを示す必要があったので、母親への同意を示し、児相との敵対的な関係を維持するしかなかったでしょうし、母親から言えば、父親が児相との対応にイニシャティブを取ろうとすることに表向き反対できなかったでしょうし、子どもとの交流についての要求を通すためには、父親の力を借りた方が有利だと感じてもいたでしょう。一方で、夫婦間のことについては、表立って話し合いのテーマにすることは、夫婦共に抵抗があったでしょう。
とはいえ、子どもを家庭に帰すことを考えた時、帰る先の家庭の安定感はとても大切なことです。SVが個別面接を始めてしばらくして、私自身は退職することになったので、その後の展開は分かりませんが、父親の発達的な特徴をもっと早く感じて、面接構造の検討ができれば、もう少し違った展開になっていたかも知れません。発達障害がある方は、(すべてではありませんが)複数人での面接よりも、1対1での面接の方が、私の経験ではお互いが理解しやすいような印象があります。 児相と対立する事例の中には、保護者に発達的な特徴を持つ人がいます。とすると、面接方法も決まった形ではなく、保護者の特徴に合わせた(保護者が話しやすく、お互いが理解しやすい)方法を検討することも必要だなと感じた例でした。

コメント