今回は「福祉司・心理司と一時保護所職員とのあいだ」というテーマで書いてみたいと思います。
「一時保護所職員」というのは長いので、これからは「保護所職員」とします。
福祉司・心理司と保護所職員のあいだのことを考える時、大きな違いは保護所職員は、「子どもの生活」を見ているということです。もちろん、職員さんが1人で24時間見ている訳ではなく、交代制の中で子どもの生活をみているということです。
保護所での「生活」は、その時、入所している児童により集団の大きさや年齢構成などは変化しますが、小さな社会を作り出しています。小さな社会ではありますが、子ども1人1人が孤立しているのではなく、相互に影響しあって生活しています。また、大人である職員もその保護所社会の一員であり、子ども達や他の職員と相互に影響し合いながら、保護所という社会を作っています。
子どもが保護所に入所すると、保護所という社会に参加することとなり、その社会のルールに従って生活することになります。保護所社会のルールというのは、例えば、朝何時に起きて、何時に寝るかといった1日のスケジュールもそうですし、保護所の中でやっていいことと、いけないことというのもその社会のルールになります。保護所は集団生活なので、お互いが気持ちよく生活するためには、どうしても最低限のルールがあり、そのルールは守ることが大切であることを伝えられます。何を言いたいかというと、保護所での子どもは、社会的な存在であり、前述のとおり他のお子さんや職員と相互に影響し合いながら生活しているということを認識しておく必要があると思います。初めて保護所に入所する子どもにとっては、これまで経験していない社会に入っていくことになり、保護所入所までに培ってきた、その子なりの方法を駆使して、保護所生活に適応していくということが起こります。保護所職員は、入所した子どもがどのような方法で保護所の社会に適応していくのかを観察しているということになります。
一方、福祉司や心理司は、子どもと個別の面接を行いますが、一般的には、その子が所属している社会とは離れた中での面接となり、自分との関係をどのように創っていくかということは見ることができでも、それ以外の子どもの社会への適応方法を見る機会はあまりありません。ただ、福祉司や心理司との個別の面接では、社会の中では気にせざるを得ない、周囲との関係性をあまり気にしないで表現することが可能となります。
少し極端に言うと、保護所職員は、子どもがどのような社会性を発揮しているのかを見ており、福祉司や心理司は、周囲との関係性から離れたところで子どもがどんな表現をするのかを見ているということになります。もちろん、重なっている部分はありながらも、子どもの異なった部分を見ているのだということを、福祉司・心理司と保護所職員双方が認識しておく必要があると思います。
福祉司や心理司と保護所職員のあいだについては、子どもの異なる側面を見ている可能性が高いのだという認識と、もう1点、それぞれが異なった役割をしていることの認識が必要だと思います。
保護所職員は、保護所の社会の中で子どもがどのように適応していくかを見ているのですが、その方法が例えば他の児童や職員に対して攻撃的だったり、あるいは逆にほとんど交流しなかったりと、外の社会では適応しにくい方法であった場合に、その方法の修正を促していくことが1つの役割でしょう。また、保護所は、頭に「一時」とあるように、一時的に生活する場所であり、これから子どもがどこで生活していくのかを決めていく場所です。なので、保護当初は保護所社会に適応していくことが中心となりますが、後半には、家に帰るのか施設や里親さんのところに行くのか決めるまでの生活の場所ということになるので、子どもがこれから先の生活の場所をどうしていくか決めるのに保護所職員は子どもと一緒に考えていくことがやはり役割の1つとなります。
児相は子どもの気持ちを尊重しつつ、会議で今後の方向性を決定するので、福祉司個人ではなく組織として方向性を決めるものなのですが、会議で決まった方向性を子どもに伝えるのは一般的には福祉司の役割です。なので、子ども側から言うと、これから生活する場所を決めていく時期になると、福祉司は自分のこれからのことを決める人なります。そうなると、福祉司の前では単に自分の気持ちを素直に表現するというよりは、自分の気持ちを話すことで、保護者に伝わったらどう感じるかとか、保護所でこれまで関係してきた他の子や保護所職員がどう感じるかといったことを考えながら話すことになります(もちろん、子どもの年齢によって異なります)。
一方、心理司は子どもの意向を尊重する立場で面接することと、これから先のことを決める人ではないので、子ども側からいうと、さっきあげたような人達がどう感じるかをあまり気にせず表現してもよい人となります。
ということで、保護所職員は、子どもが保護された初期は、集団への適応方法を見ながら、必要に応じて修正していくこと、保護後半には、子どもがこれからどこで生活するのかを一緒に考える役割があり、心理司は、保護当初から子どもの意思の尊重、そして福祉司は、子どもが保護されてから時期によって子どもからの見え方が変わってくることがあること、また、子どもが福祉司の前で表現したことと、心理司や保護所で表現したことが異なる可能性があることを認識しながら、自分の役割を果たしていくことが大切だと思います。
コメント