先日、少人数でお酒を飲む機会がありました。その中で母子関係の話が話題になりました。話し出したのはある程度ベテランの方(Aさん)で、Aさんは母子葛藤を抱えていると言います。Aさんの母は定年まで働いていたのですが、きょうだいが多い末っ子で、Aさんの母の母(祖母)は実家の自営業で忙しく、Aさんの母は祖母というより、年の離れたきょうだいに育てられたということです。
Aさんの母に対する不満は、『自分(Aさん)の気持ちを分かってくれず、母は自分(母)の都合を優先する』ということなのですが、母自身、祖母から可愛がられた記憶がなく、年上とはいえきょうだいに育てられた環境というのは、祖母からすれば(時代的にも)年上のきょうだいが下の子どもを育てるのは当たり前で、年上のきょうだいに基本的な育児は任せていたでしょうし、任されたきょうだいからすれば、まだ遊びたい年齢の時に、年下の子どもの気持ちを尊重して相手をすることは難しいことだったでしょう。そういうことが想像されたので、祖母あるいは年上のきょうだいが母の気持ちを尊重していた可能性は低いと思うし、だとすると、母自身が気持ちを尊重される体験が少なかった訳だから、母がAさんの気持ちを尊重するということが具体的にはどうすればよいのか分からなかったのではないかと私は話しました。
すると、Aさんは、そういう可能性は以前から感じていて、祖母が子どもの頃に『気持ちを尊重して貰える』体験が少なかったであろうことは頭では理解できるが、だからといって自分(Aさん)が気持ちを尊重して貰えなかったことについて不満が解消することはなく、母を許そうという気持ちになれないと話します。私は「そうなんだ、それは辛いね」とAさんの気持ちを受け止めることしかできませんでした。
そういう方を見ていると、過去に傷ついた体験というのは、なかなか癒やされにくいものなんだなあと感じます。これはお酒の場での会話ですので、どこまで真実なのかは分かりませんが、Aさんは社会的には自立しており仕事上も優秀な方です。そういう方でも、色んなことを抱えながら生きているんだなあと感じた夜でした。
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