#61 プロ意識

日常のエピソード

公務員という仕事は、税金が給料として支払われます。職種によって給料表というのが決められていて,その給料表の〇級△号はいくらという規定があります。給料は自分の仕事内容ではなくて給料表で決められているという構造になっています。

私は神奈川県福祉職として採用され、2年目から心理の仕事をし始めました(当時の神奈川県では「心理職」という採用枠はなく、福祉職の中で心理の勉強をしてきた人の中で希望により心理の仕事をするという構造になっていました)。

私が児童相談所で心理の仕事をするようになったのは採用7年目からでしたが、(何年目頃からかは忘れましたが)1回10円でも良いから相談料を貰った方がよいのではないか、と感じるようになりました。その理由は、公的機関の仕事は基本的には無料で(このこと自体は良いことだと思いますが)自分の仕事の対価としてお金を貰うという感覚がほとんどないのです(給料は給料表で決められているので)。自分の仕事とその対価が直結しないということは、自分の仕事とその成果が意識の中ではつながりにくいということになるので、仕事への責任感が薄くなってしまう可能性があると感じていました。端的に言うと、仕事の結果は給料(対価)には関係ないと感じてしまうということです。

そのことは、「相談」という業務において(相談する側は無料ということで助かるのですが)相談を受ける側から言うと、「相談」を受けた結果が給料としては反映されないことになるので、相談の効果についての責任意識が高くなりにくいのです。そうすると、相談内容について振り返ってみるという作業がおろそかになりがちです。自分の仕事を振り返る(見直す)機会がなくて仕事が上達することはないと思います。振り返らないということは、やりっぱなしということですから、仕事の結果についての責任を取らないということにもつながります。公務員は責任を取らないと言われるのもこうした背景が一つの遠因になっているような気がします。

私たちが一般に「プロの仕事」と感じるのは、仕事の手際が良かったり粘り強さがあったり力強さがあったりして、仕事そのものや仕事に向かう姿勢が見事だと感じるからだと思うのですが、表面上見事と見えるためには普段からの絶え間ない努力があるからこそだと思うのです。

公務員であった私は「相談」を受ける結果(対価)として「給料」というお金ではなくて相談対象となった子どもの変化や「ありがとうございました」という保護者からの感謝の言葉を励みにしながら、「プロ」としての意識を高め、普段の努力を続けてきたように思います。 ただ、公務員という職業は、上記のように仕事内容が給料(対価)に直結しないことや異動も数年に1回あることもあり、「プロ」としての意識が育ちにくい環境にあるなあとも思い返しています。

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