#104 寄り添うこと

日常のエピソード

随分昔になりますが、テレビの番組で、アルコール関連の病気の話題をしていて、そこに出演していた専門家と言われる若い女性が、「晩酌をする前に1杯の水を飲むとよい」というような趣旨の話をしていました。この番組を見ていた時、この専門家と言われる若い女性は、酒飲みことが分かっていないなあ、あるいは汗をかいた後のビールのおいしさを知らないのだなあと感じました。酒飲みというのは、汗をかいた後の1杯のビールを飲むために(意図的に)運動することもあるのです。ビールを飲むために運動したのに、ビールの前に水を飲んでは台無しです。アルコールに関する病気をテーマにするのであれば、アルコールを飲む人を念頭に考える必要があるでしょうし、まずは、酒飲みの人の気持ちに寄り添おうとする気持ちが必要で、その上で、目の前にいる人のアルコールとのつきたい方を一緒に考えていく姿勢が大切なような気がします。まあ、テレビ番組というのは、一般の人たちを対象にすることが前提でしょうから、医学的に正しいとされる知識を広めようとすることは仕方ないのかも知れません。

人への支援を仕事にしている場合、支援対象となっている人がどのような気持ち(意図)で課題となっている言動をしているのかを探ることは大切なことです。上記のように人の意図に反した(ビールを飲みたくて運動しているのに、ビールの前に水を飲めというような)アドバイスというのは聞いてもらえない可能性が高くなります。ビールを飲みたくて運動しているような人の場合、アドバイスを聞いても「何を言っているんだ」と拒否する気持ちが先にでてきてしまうような気がします。まずは、「運動の後のビールはおいしいですよね」と寄り添うことで、「この人は、酒飲みのことが分かっている」と感じて貰い、その人にとって課題になっていることを一緒に考えていくことを受け入れてもらえるような関係を築くきっかけになるのではないかと思います。もちろん、これはきっかけの1つでしかなく、その先の関係の作り方がカギになっていくとは思いますが、最初から拒否されては先に進むことすらできません。

私には苦い記憶があります。ある施設で不適応な行動をとった子どもを担当することになったのですが、(そのお子さんには広範性発達障害の傾向があったのですが)最初の面接で、その子の気持ちに寄り添おうとして、そのお子さんが行った行動を知っていることと、その気持ちも理解できるということを伝えたのですが、その子にとっては、(おそらく)非難されたように聞こえたでしょう、その時から関係を拒否され、その後、その子は入院することになるのですが、入院した後も会ってもらうことができなくなりました。このことは、初回面接だけで、その後の関係が決まってしまうということも起こり得るということを示しています。この時の私の反省は、その子が持つ傾向をよく知らないままに、安易に寄り添おうとすると、子どもに拒否的な気持ちを喚起させる可能性があるということでした。 寄り添うことは大切であることに間違いはないと思いますが、よく状況を理解した上で寄り添っていくことが必要なのだなあと感じた日でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました