#103 療育手帳判定業務

心理シリーズ
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今回は、児相の心理職が(おそらく)最も多く実施するであろう「療育手帳判定業務」について書きたいと思います

私が所属していた神奈川県では知的障害児に発行する手帳のことを「療育手帳」と呼んでいましたが、自治体によっては「愛の手帳」や「愛護手帳」といった呼び名もあるようです。いずれにしても、知的障害がある児童(大人対してもですが)に発行される手帳のことです。ここでは「療育手帳」と呼ばせていただきます。

国の「療育手帳要綱」では、その目的には主に2つの目的があって、それは①対象者に対して一貫した指導と相談を行うこと②各種の支援措置を受けやすくするためという2点が目的として書かれています。神奈川県の要綱でも同じような目的が書かれていたことを記憶しています。

ただ、実際に仕事を始めてみると、特に最近では先ほどの目的の①一貫した指導と相談よりは②の支援措置を受けやすくするためという目的が、ほとんどになっているかと思います。これは、(おそらくですが)①の一貫した指導や相談というのは、子どもが幼少時には市町村や療育機関が行っている相談窓口、学童期になると支援級や支援学校の先生が相談に応じることが多くなっていくので、保護者としては児童相談所に相談するというニーズが少なくなってきているからだと思われます。このことは、相談する窓口が広がったという意味では良いことだろうと思います。

児童相談所については②の目的が主になってきている訳ですが、そのことは療育手帳の判定をする児童相談所の職員からすると、子どもに対する知能検査実施と保護者への説明が主な仕事になりますから、仕事内容としては、ルーティン化しやすいものになっていかざるを得ません。ルーティン化というのは、決まった手順を決めて習慣化するということを含むので、仕事をするエネルギーを少なくすることには寄与しますが、目の前にいる子どもや保護者をあまり見ないということにつながりかねません。すべての仕事に対して同じように全力投球することは、なかなか難しいことですが、すべてをルーティン化すればよいということにもならないと思います。

私が現役だった頃、次のようなことに出会ったことがあります。その保護者は自分の子どもに発達障害があることは認めていて、でも発達障害を理由に発行される精神障害者保健福祉手帳ではなく、より支援が充実している療育手帳が欲しいと主張している方でした。その子どもにはベテランの心理司が担当したのですが、検査終了後、結果説明で知的な課題はないことを伝えると、保護者は検査者が子どもに解答を誘導していた(解答できるように話していたと聞こえた)と主張し始めたのです(たまたま、検査室と待合室が近かったのです)。私は、そんなことはありえないと感じましたが、その日は、経過を調査した上で結果を伝えることを保護者に伝え、その場は帰ってもらいました。最終的にどうなったかというと、当時の課長と私が、時間外に自宅を訪れて経過を説明するということになりました。

まあ、その事例は事なきを得たのですが、この事例は極端な例ではありますが、療育手帳の判定業務というのは、(最近では、特に)支援を受ける権利を認めるか否かにかかってくる業務なので、単純にルーティン化するのではなく、担当することになった人の情報(分かっている範囲ですが)を事前に頭にいれて、自分がどのように対応するかをイメージしておくことが大切だと思います。

それと、これから書くことは、言わずもがなのことではありますが、医学的な診断ができるのは医者だけなので、知的障害であると診断できるのは医者だけなのです。児相の心理が行っている業務は、自分が所属する自治体の療育手帳制度に該当するかどうかを判断するための業務を行っているのであって、知的障害の判断をしているのではないことを肝に銘じておく必要があると思います。 療育手帳判定業務は、児相の心理にとっては量の多い業務でルーティン化しやすい業務ではありますが、子どもや保護者との出会いと挨拶、検査実施、検査実施後の内容確認、検査結果の説明、その後の事務処理、記録など、児相の心理として必要な業務(他にももちろんありますが)を一通り実施できるものであり、児相心理として基礎となる業務の1つであるので、ルーティン化できる範囲はしてもよいと思いますが、1人1人を大切にするという視点を忘れずに大切にしていきたい重要な業務でもあると感じています。

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